請求書が届く。
内容を確認する。
Excelの管理表へ入力する。
そのあと、会計ソフトにも同じ金額を入力する。
場合によっては、さらに支払管理表や社内システムにも入力する。
こうした作業に心当たりがあるなら、請求書業務で二重入力・多重入力が発生している可能性があります。
一つひとつの入力は数分でも、毎月何十枚、何百枚と請求書を処理すれば、その時間は積み重なります。
さらに問題なのは、時間だけではありません。
同じ情報を何度も人が入力すれば、
- 入力ミス
- 金額の転記間違い
- 支払期限の入力漏れ
- 更新忘れ
- システム間の数字の不一致
などが起こる可能性も高くなります。
そこで考えたいのが、「入力を速くする」のではなく、「同じ情報を何度も入力しない仕組みに変える」ことです。
OCRやAI OCR、請求書受領システム、CSV連携、API連携などを利用すると、請求書から読み取ったデータを別のシステムへ受け渡し、手入力を減らせる場合があります。
この記事では、請求書業務で二重入力が発生する原因と、Excel・会計ソフトへの転記を減らす方法を初心者向けに解説します。
請求書の二重入力とは?
紙・PDF・メールなどで請求書を受領。
取引先名・金額・支払期限などを管理表へ転記。
Excelに入力した内容を再び会計ソフトへ入力。
別の表やシステムへ支払情報をさらに転記。
請求書業務における二重入力とは、同じ請求書の情報を複数の場所へ人が繰り返し入力している状態です。
例えば、取引先から届いた請求書を確認し、
- Excelの請求書管理表へ入力
- 会計ソフトへ入力
- 支払管理表へ入力
している場合です。
入力している内容は、
- 取引先名
- 請求日
- 支払期限
- 請求金額
- 消費税額
- 勘定科目
- 部門
- 支払状況
など、ほとんど同じこともあります。
にもかかわらず、システム同士がつながっていなければ、人が画面を見ながら何度も入力することになります。
二重入力は経理担当者が非効率だから起こるのではありません。
多くの場合、業務の途中にExcelや複数のシステムがあり、それぞれが独立していることが原因です。
請求書の二重入力が起こる5つの原因
二重入力をなくすには、まず「なぜ同じ情報を何度も入力しているのか」を確認する必要があります。
Excelを中継地点として使っている
最もよくあるのが、Excelを請求書処理の中継地点として使っているケースです。
例えば、
請求書 → Excel → 会計ソフト
という流れです。
Excelでは一覧管理しやすいため、支払予定や承認状況を把握する目的で使われます。
しかし、会計ソフトへデータを渡す仕組みがなければ、最後は人がExcelを見ながら再入力することになります。
Excel自体が問題なのではありません。
Excelと次のシステムがつながっていないことが二重入力の原因です。
システムごとに同じ情報を管理している
経理業務では、
- 請求書管理
- 会計処理
- 支払管理
- 承認管理
を別々のシステムで行っている企業もあります。
各システムが独立していると、同じ取引先名や金額、支払期限などを何度も入力することになります。
特に、「念のためこちらにも入力しておこう」という運用が積み重なると、二重入力どころか三重入力になることもあります。
紙やPDFを見ながら入力している
請求書が紙やPDFで届く場合、そのままでは会計ソフトへ取り込めないことがあります。
その結果、担当者が請求書を見ながら手入力します。
これは最初の入力ですが、その後Excelや別システムへも同じ内容を入力すれば二重入力になります。
OCRやAI OCRを利用すると、請求書に記載された情報をデータ化し、最初の入力作業そのものを減らせる場合があります。
CSV連携を使っていない
利用しているシステムによっては、データをCSV形式で出力・取り込みできる場合があります。
それでも、
「やり方が分からない」
「昔から手入力している」
という理由で、CSVを使わず転記を続けているケースがあります。
完全な自動連携が難しくても、CSVを使うだけで二重入力を減らせることがあります。
業務フローを変えずにシステムだけ追加している
新しいシステムを導入しても、以前のExcel管理をそのまま残してしまうことがあります。
すると、
新システムにも入力
Excelにも入力
となり、むしろ入力先が増えてしまいます。
システムを導入するときは、「何を新しく始めるか」だけでなく、何をやめるかまで決めることが重要です。
二重入力が発生していないかチェック
- 請求書を見ながらExcelへ入力している
- Excelから会計ソフトへ再入力している
- 同じ金額を複数の管理表へ入力している
- 支払済み情報を別の表へ入力している
- 新しいシステム導入後もExcelを残している
- CSV出力できるのに手入力している
- 請求書データを他部署も別々に入力している
- 「念のため」の管理表が増えている
二重入力を放置すると何が問題?
二重入力は「少し面倒な作業」で終わる問題ではありません。
件数が増えるほど、経理業務全体に影響します。
作業時間が増える
同じ情報を2回入力すれば、単純に入力工程が増えます。
月数件なら大きな問題にならなくても、請求書が増えるほど負担は大きくなります。
しかも、入力後には内容確認も必要です。
つまり二重入力は、
入力時間 × 2
だけでなく、
確認時間も増える
ということです。
入力ミスが増える
人が転記する回数が増えるほど、数字や日付を間違える可能性も増えます。
例えば、
「98,000円」を「89,000円」と入力する。
支払期限を1日ずらして入力する。
取引先を似た会社名で登録する。
こうしたミスが起きると、あとで照合作業が必要になります。
システム間で数字が合わなくなる
Excelでは支払済みなのに、会計ソフトでは未処理。
会計ソフトでは登録済みなのに、Excelでは未入力。
という状態になると、「どちらが正しいのか」を確認する作業が発生します。
二重入力は、単に同じ作業が増えるだけではなく、複数の正解が存在する状態を生みやすい点が問題です。
担当者しか分からない運用になる
二重入力が長く続くと、
「まずこのExcelへ入力して」
「次にこのシートをコピーして」
「その後このシステムへ入力」
という独自ルールが増えていきます。
結果として、担当者が休んだだけで処理方法が分からなくなることもあります。
請求書の二重入力をなくす5つの方法
二重入力をなくす方法は、一つではありません。
現在の業務で、
- どこから入力が始まっているのか
- どのシステムへ再入力しているのか
- 何を人が判断し、何を機械に任せられるのか
によって、適した方法が変わります。
ここでは、代表的な5つの方法を紹介します。
1.Excelへの入力をやめる
最もシンプルなのは、請求書管理の中継地点として使っているExcelをなくす方法です。
例えば、
請求書 → Excel → 会計ソフト
という流れなら、
請求書 → 会計ソフト
または、
請求書 → 請求書受領システム → 会計ソフト
へ変更します。
Excelが本当に必要なのかを確認し、単なる一時的な管理表になっているのであれば、思い切ってなくすことも検討できます。
ただし、Excelを削除するだけで支払管理や承認管理ができなくなる場合は、代替手段を用意してから移行します。
2.OCR・AI OCRで最初の入力を減らす
紙やPDFの請求書を見ながら手入力しているなら、OCRやAI OCRを使う方法があります。
OCRを利用すると、請求書に記載された文字や数字を読み取り、データとして扱えるようになります。
例えば、
- 取引先名
- 請求日
- 支払期限
- 請求金額
などを読み取ることで、最初の手入力を減らせます。
ただし、OCRで読み取ったデータをその後またExcelへコピーし、さらに会計ソフトへ入力するのであれば、二重入力は完全にはなくなりません。
重要なのは、読み取った後にどこまでデータを流せるかです。
3.CSV連携を使う
利用しているシステム同士に直接連携機能がなくても、CSVを使ってデータを受け渡せる場合があります。
例えば、
請求書管理システム → CSV出力 → 会計ソフトへ取込
という流れです。
CSVは完全自動ではありませんが、画面を見ながら一件ずつ入力するより効率化しやすい方法です。
ただし、項目名や形式が合わない場合は加工が必要になることもあります。
4.API連携を利用する
より自動化を進めたい場合は、API連携も選択肢です。
APIを使うと、システム同士でデータをやり取りできるため、CSVファイルを手動で出力・取込する作業も減らせる場合があります。
例えば、
請求書受領システム → 会計ソフト
を直接連携できれば、請求書データを再入力する必要を減らせます。
ただし、API連携の対応可否や対象項目はサービスによって異なります。
5.請求書受領システムへまとめる
請求書の受領、データ化、承認、保存、会計連携まで複数のツールに分かれている場合は、請求書受領システムへまとめる方法があります。
サービスによっては、
- 請求書受領
- OCR・AI OCR
- データ化
- 承認ワークフロー
- 会計ソフト連携
- 電子保存
まで一元管理できます。
二重入力の原因が「ツールの多さ」にある場合は、入力作業を減らすだけでなく、業務フロー全体を整理しやすくなります。
二重入力を減らす方法の比較
OCR・AI OCR・CSV・API・請求書受領システムの違い
二重入力を減らす方法を選ぶときに混同しやすいのが、それぞれの役割です。
OCR・AI OCRは「読む」
OCRやAI OCRは、紙やPDFに書かれている文字や数字を読み取り、データ化するための技術です。
つまり、
人が請求書を見ながら入力する
作業を減らすのが主な役割です。
CSVは「まとめて渡す」
CSVは、あるシステムのデータを別のシステムへまとめて移すために使われます。
自動連携ではありませんが、一件ずつ手入力するより効率化できます。
APIは「システム同士をつなぐ」
APIは、システム同士が直接データをやり取りするための仕組みです。
CSVのようにファイルを毎回操作しなくても、条件が合えば自動的に連携できます。
請求書受領システムは「業務全体をまとめる」
請求書受領システムは、OCRやワークフロー、会計連携など複数の機能をまとめて提供します。
そのため、
「手入力だけではなく、請求書業務全体を効率化したい」
という企業に向いています。
どの方法を選ぶべき?
手入力だけが問題ならOCR・AI OCR
紙やPDFを見ながら入力する作業に時間がかかっているなら、まずOCRやAI OCRを検討します。
特に請求書の枚数が多い場合は、入力時間を減らせる可能性があります。
Excelと会計ソフトの再入力が問題ならCSV・API連携
請求書情報はすでにデータ化されているのに、Excelや会計ソフトへ何度も入力しているなら、連携方法を確認します。
CSVで十分なのか、API連携まで必要なのかを判断します。
承認・保存まで複雑なら請求書受領システム
二重入力だけでなく、
- 誰が承認したか分からない
- 紙とPDFが混在している
- 保存場所がバラバラ
- 支払管理もExcel
という状態なら、請求書受領システムの方が改善しやすい場合があります。
課題別に見るおすすめの方法
OCR・AI OCRを検討
CSV・API連携を検討
Excelそのものを見直す
請求書受領システムを検討
二重入力を減らすときに失敗しないポイント
システムを増やすだけにしない
「効率化したい」と考えて新しいシステムを追加しても、古いExcel管理を残したままだと入力先が増えるだけです。
導入時には、
新しく何を始めるか
だけでなく、
今まで何をやめるか
も決めます。
自動化する前に業務フローを整理する
複雑な業務をそのまま自動化すると、複雑な仕組みができるだけです。
まず、
「このExcel入力は本当に必要か」
「この確認作業は誰のためか」
を確認します。
不要な工程をなくしてから自動化した方が、システム構成もシンプルになります。
例外処理を考えておく
すべての請求書が同じ形式とは限りません。
OCRで読み取りにくい請求書や、通常とは異なる支払条件の請求書もあります。
自動化する場合でも、
「読み取れなかった場合は誰が確認するか」
「例外請求書をどう処理するか」
を決めておきます。
正式なデータを一つに決める
Excel、会計ソフト、請求書受領システムのすべてに同じ情報を持たせると、どれが正しいのか分からなくなります。
最終的には、
どのシステムを正式な管理データとするか
を明確にします。
二重入力をなくす本当の目的は、入力回数を減らすことだけではなく、「正しい情報が一か所にある状態」を作ることです。
請求書の二重入力をなくす具体的な6ステップ
請求書の受領から支払いまでを書き出す。
同じ情報を入力している場所を確認する。
不要なExcelや管理表を整理する。
紙・PDFからの手入力を減らす。
CSVやAPIで再入力を減らす。
正式な管理先を一つに決める。
二重入力を減らすときは、いきなり新しいシステムを入れるより、まず現在の業務を整理することが大切です。
どこで同じ情報を繰り返し入力しているのかを見つけ、その工程から順番に減らしていきます。
STEP1 請求書が届いてから支払いまでを書き出す
最初に、現在の業務フローをそのまま書き出します。
例えば、
請求書を受け取る
↓
Excelへ入力
↓
上司へ承認依頼
↓
会計ソフトへ入力
↓
ネットバンキングで支払い
↓
Excelへ支払済みと入力
という流れです。
このように並べると、同じ情報を何度入力しているのかが見えやすくなります。
STEP2 同じ項目を入力している場所を探す
次に、
- 取引先名
- 請求日
- 支払期限
- 金額
- 税額
- 部門
- 支払状況
などが、どこに入力されているか確認します。
例えば「請求金額」が、
Excel
会計ソフト
支払管理表
の3か所に入っているなら、多重入力が発生しています。
STEP3 不要な入力をやめる
すべての管理表が本当に必要か確認します。
「昔から使っているから」
「念のため残しているから」
という理由だけで使われているExcelがあれば、廃止できないか検討します。
二重入力をなくすうえで最も効果が大きいのは、入力を自動化することより、不要な入力自体をなくすことです。
STEP4 最初の入力をデータ化する
紙やPDFの請求書を人が見ながら入力している場合は、OCRやAI OCRを検討します。
これにより、
紙・PDF → 手入力
だった部分を、
紙・PDF → データ化
へ変えられる場合があります。
ただし、読み取ったデータをその後どこへ連携するかまで考える必要があります。
STEP5 システム間をつなぐ
データがすでにあるのに再入力している場合は、CSVやAPI連携を確認します。
例えば、
請求書受領システム → 会計ソフト
までつながれば、人が同じ金額を再入力する必要を減らせます。
完全自動化が難しい場合でも、CSV取込だけで転記作業が大幅に減ることがあります。
STEP6 旧Excel管理を終了する
新しい運用が安定したら、旧Excel管理を終了します。
ここを曖昧にすると、
新システムにも入力
Excelにも入力
となり、むしろ二重入力が増えます。
移行時には、
「いつまでExcelを並行利用するのか」
を決めておきましょう。
請求書の二重入力についてよくある質問

Excelと会計ソフトへの二重入力はどうすれば減らせますか?
まず、Excelが本当に必要か確認します。
Excelが単なる中継地点なら、請求書受領システムや会計ソフトへ直接データを渡せないか確認します。
既存のExcelを残したい場合でも、CSV取込に対応していれば手入力を減らせる可能性があります。
OCRを導入すれば二重入力はなくなりますか?
OCRだけでは二重入力がなくならないことがあります。
OCRは紙やPDFの情報をデータ化する仕組みです。
読み取った後にExcelへ入力し、さらに会計ソフトへ再入力していれば、二重入力は残ります。
重要なのは、OCRの後にデータをどこまで連携できるかです。
CSVとAPIはどちらがいいですか?
目的によって異なります。
CSVは比較的導入しやすく、既存システム間でデータをまとめて移したい場合に向いています。
APIはより自動化しやすい一方、対応しているサービスや連携内容が限られる場合があります。
まず現在使っているシステムがどちらに対応しているか確認しましょう。
二重入力をなくすために会計ソフトを変更する必要がありますか?
必ずしも変更する必要はありません。
現在の会計ソフトがCSV取込や外部サービスとの連携に対応していれば、そのまま利用できる場合があります。
先に会計ソフトを変えるのではなく、現在のシステムでできる連携方法を確認する方が効率的です。
小規模企業でも二重入力を自動化する意味はありますか?
あります。
請求書の枚数が少なくても、同じ情報をExcel・会計ソフト・支払管理表へ入力しているなら、担当者の負担になります。
ただし、月数件程度で大きな負担がない場合は、高額なシステムを導入する必要はありません。
企業規模よりも、現在どれだけ手作業が発生しているかで判断しましょう。
まとめ|二重入力をなくすなら「入力を速くする」より「入力しない仕組み」を作る
請求書の二重入力は、経理担当者の入力速度の問題ではありません。
多くの場合、
請求書
↓
Excel
↓
会計ソフト
↓
支払管理表
というように、複数の管理先が分断されていることが原因です。
そのため、二重入力をなくすには、
- 現在の業務フローを整理する
- 同じ情報を入力している場所を探す
- 不要なExcel・管理表をやめる
- OCR・AI OCRで最初の入力を減らす
- CSV・APIでシステムをつなぐ
- 最終的な管理先を一つにする
という順番で考えます。
重要なのは、
「どうすればもっと速く入力できるか」
ではありません。
「そもそも、その入力をしなくて済む方法はないか」
と考えることです。
請求書業務を効率化するなら、
人が同じ情報を何度も入力する業務から、データが一度入力されれば次の工程へ流れていく業務へ変える。
これが二重入力解消の基本です。


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