紙の請求書を毎月ファイルに綴じていると、保管場所の確保、探す手間、入力作業、支払確認など、細かい負担が積み重なります。
「紙の請求書をPDFにすればいいのか」
「スキャンしたら原本は捨ててもいいのか」
「電子帳簿保存法では何に注意すればいいのか」
このあたりで迷う企業も多いはずです。
紙の請求書は、スキャンして電子データとして管理することで、検索しやすくなり、経理業務の効率化につながります。
ただし、単にスマホや複合機で撮影・スキャンすれば終わりではありません。
電子帳簿保存法では、国税関係書類のスキャナ保存や電子取引データ保存について、制度ごとの情報やQ&Aが国税庁から公開されています。紙の請求書を電子化する場合は、こうした制度に沿った保存方法を確認しておく必要があります。
この記事では、紙の請求書を電子化する方法、スキャン保存の流れ、注意点、電子化サービスを使うべきケースをわかりやすく解説します。
紙の請求書を電子化する前に確認したいポイント
紙の請求書を電子化する基本の流れ
スキャン保存で確認したい注意点
電子帳簿保存法との関係
PDF化だけでは不十分なケース
請求書電子化サービスを使うべき企業
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紙の請求書を電子化するとは?
紙の請求書を電子化するとは、郵送などで受け取った紙の請求書をスキャンし、PDFなどの電子データとして保存・管理することです。
単に紙をPDFにするだけではなく、
- 請求書をスキャンする
- ファイル名や保存先を整理する
- 取引先名・日付・金額で検索できるようにする
- 必要に応じて会計ソフトへ連携する
- 電子帳簿保存法に沿った保存方法を確認する
といった作業まで含めて考える必要があります。
紙のまま保管していると、過去の請求書を探すたびにファイルを開いたり、保管スペースを確保したりしなければなりません。
電子化して、取引先名・日付・金額などで検索できる状態にしておけば、過去の請求書を探しやすくなります。
ただし、保存方法を誤ると「電子化したつもりでも、必要な要件を満たしていない」という状態になる可能性があります。
そのため、紙の請求書を電子化する場合は、業務効率化と法対応の両方を意識することが大切です。
紙の請求書を電子化する主な方法
紙の請求書を電子化する方法は、大きく3つあります。
1. 自社でスキャンして保存する
もっともシンプルなのは、複合機やスキャナーを使って自社で請求書をスキャンする方法です。
紙の請求書をPDF化し、社内の共有フォルダやクラウドストレージに保存します。
この方法はすぐに始めやすい一方で、
- ファイル名のルール
- 保存場所
- 検索方法
- 原本の扱い
- 電子帳簿保存法への対応
を自社で決める必要があります。
請求書の枚数が少ない企業なら、自社スキャンでも対応できる場合があります。
しかし、毎月の請求書が多い企業では、スキャン作業やファイル整理が経理担当者の負担になりやすいです。
2. 請求書電子化サービスを使う
請求書電子化サービスを利用すると、紙の請求書をスキャンしてデータ化するだけでなく、AI-OCR、承認ワークフロー、会計ソフト連携なども利用できます。
サービスによっては、郵送された紙の請求書を代わりに受け取り、スキャンやデータ化、原本保管まで対応するものもあります。
この方法は、自社でスキャン作業を行うより費用はかかります。
その代わり、
- 入力作業を減らせる
- 請求書を一元管理できる
- 承認フローを電子化できる
- 会計ソフトと連携できる
- 紙原本の管理を減らせる場合がある
といったメリットがあります。
紙の請求書が多い企業や、経理担当者の負担を減らしたい企業では、請求書電子化サービスを検討する価値があります。
3. 受領代行・BPOを利用する
紙の請求書を受け取るところから外部へ任せたい場合は、受領代行やBPOを利用する方法もあります。
この方法では、取引先から届く請求書をサービス提供会社側で受領し、スキャン・データ化・入力支援などを行います。
自社で郵便物を開封したり、スキャンしたりする手間を減らせる点がメリットです。
特に、
- 紙の請求書が多い
- 経理担当者が少ない
- 月末月初に処理が集中する
- 拠点ごとに請求書が届く
といった企業では、受領代行を含めて比較するとよいでしょう。
紙の請求書を電子化する流れ
紙の請求書を電子化するときは、次の流れで進めると整理しやすくなります。
紙の請求書を電子化する基本の流れ
請求書を受け取る
郵送や手渡しで届いた紙の請求書を集めます。
内容を確認する
取引先名、請求日、金額、支払期日、登録番号などを確認します。
スキャンする
複合機やスキャナーでPDF化します。
ファイル名を付ける
日付・取引先名・金額など、後から探しやすい名称にします。
保存・検索できる状態にする
保存先を決め、必要な情報で検索できるように整理します。
原本の扱いを決める
紙原本を保管するか、返送・破棄できるかを確認します。
電子帳簿保存法では何に注意する?
紙の請求書をスキャンして保存する場合、電子帳簿保存法の「スキャナ保存」と関係します。
一方、メール添付のPDF請求書やWebサイトからダウンロードした請求書など、最初から電子データとして受け取った請求書は「電子取引」に関係します。
国税庁は電子帳簿保存法について、電子帳簿等保存、スキャナ保存、電子取引の制度ごとに情報を整理して公開しています。
ここで重要なのは、紙で受け取った請求書と電子データで受け取った請求書を分けて考えることです。
紙で受け取った請求書
紙で受け取った請求書をスキャンして保存する場合は、スキャナ保存の対象になります。
スキャナ保存では、請求書、納品書、見積書、注文書などの国税関係書類について、スキャン保存を行う場合の考え方やQ&Aが国税庁から示されています。
紙の請求書を電子化する場合は、スキャン後の保存方法や検索性、訂正削除の管理などを確認する必要があります。
メールやWebで受け取った請求書
メール添付のPDFや、Webサイトからダウンロードした請求書は、紙ではなく電子データとして受け取ったものです。
この場合は、印刷して紙で保管するのではなく、電子取引データとして保存する必要があります。
国税庁の電子帳簿保存法関係ページでは、電子取引に関する情報も制度ごとに整理されています。
つまり、
- 紙で届いた請求書はスキャン保存(紙で届いた請求書を電子データとして保存したい場合は、スキャナ保存の考え方を確認します。)
- PDFで届いた請求書は電子取引データ保存(メール添付のPDFやWebサイトからダウンロードした請求書など、電子データで授受した請求書は、電子取引データとして保存方法を確認します。)
というように、請求書の受け取り方によって確認するポイントが変わります。
インボイス制度との関係
請求書を電子化するときは、インボイス制度との関係も確認しておきましょう。
インボイス制度は、令和5年10月1日から開始された適格請求書等保存方式です。国税庁は、複数税率に対応した消費税額の仕入税額控除の方式として案内しています。
仕入税額控除を受けるには、原則として帳簿と請求書等の保存が必要です。国税庁は、仕入税額控除のために保存する帳簿および請求書等の記載事項を案内しています。
紙の請求書を電子化する場合でも、
- 適格請求書発行事業者の登録番号
- 税率ごとの消費税額
- 取引内容
- 取引年月日
- 取引先名
など、必要な情報を確認しやすい状態にしておくことが重要です。
紙の請求書をスキャン保存するときの注意点
紙の請求書をPDF化するだけでは、必ずしも電子帳簿保存法のスキャナ保存要件を満たすとは限りません。
国税庁は、スキャナ保存について、真実性と可視性を確保するための要件を定めています。書類の種類や保存方法によって異なりますが、主に入力期間、解像度、画像の階調、タイムスタンプまたは訂正・削除履歴を確認できる仕組み、検索機能などが関係します。
1.スキャンの解像度を確認する
国税庁のスキャナ保存要件では、一定水準以上の解像度として200dpi以上による読み取りが示されています。
文字がつぶれていたり、金額や登録番号を読み取れなかったりすると、保存データとして扱いにくくなります。
スキャン後は、少なくとも次の項目が読めるか確認しましょう。
- 取引先名
- 取引年月日
- 請求金額
- 支払期日
- 適格請求書発行事業者の登録番号
- 税率ごとの金額・消費税額
2.スキャンする時期を決める
対象となる書類によっては、受領後または通常の業務処理期間を経過した後、速やかに入力することが求められます。
請求書を机の上にため込み、数か月後にまとめてスキャンする運用では、処理漏れも起きやすくなります。
例えば、
- 受領した当日
- 支払申請を作成するとき
- 経理部門へ提出されたとき
など、社内でスキャンするタイミングを決めておくことが重要です。
3.訂正・削除の管理を考える
電子化したファイルを誰でも自由に差し替えたり削除したりできる状態では、保存データの信頼性を確保しにくくなります。
スキャナ保存では、タイムスタンプの付与や、訂正・削除の履歴を確認できる仕組みなど、真実性を確保する要件が関係します。
共有フォルダだけで管理する場合は、
- 編集できる担当者
- 削除できる担当者
- 修正時の記録方法
- バックアップ方法
を決めておきましょう。
4.検索できる状態にする
電子化のメリットを活かすには、保存した請求書を後から探せる状態にする必要があります。
単に「請求書」というフォルダへPDFを入れるだけでは、件数が増えたときに探しにくくなります。
最低限、次の項目を意識して整理しましょう。
- 取引年月日
- 取引先名
- 取引金額
電子帳簿保存法の保存制度でも、日付・金額・取引先などによる検索が重要な確認項目になります。
5.スキャン後すぐに原本を捨てない
紙の請求書をスキャンしたからといって、確認せずにすぐ捨てるのは避けた方が安全です。
国税庁のQ&Aでも、読み取り後の紙書類の廃棄について個別に説明されています。保存要件を満たしているか確認したうえで、社内の税務・証憑管理方針に沿って判断する必要があります。
少なくとも、
- スキャン画像が鮮明か
- ページが欠けていないか
- 裏面も必要ではないか
- 保存要件を満たしているか
- 経理処理や承認が完了しているか
を確認してから原本を扱いましょう。
判断に迷う場合は、税理士などの専門家へ確認してください。
スキャン保存で確認したい5つのポイント
紙をPDFにするだけで終わらせず、読み取り品質・保存時期・検索・原本の扱いまで整理しましょう。
解像度と読みやすさ
文字や金額、登録番号が明確に読める状態で保存します。
スキャンする時期
受領後の処理時期を決め、請求書をため込まない運用にします。
訂正・削除の管理
ファイルの差し替えや削除を行える権限と記録方法を決めます。
検索できる状態
日付・取引先・金額などから探せるように整理します。
紙原本の取り扱い
保存要件と社内方針を確認してから、保管・返送・破棄を判断します。
※電子帳簿保存法への具体的な対応は、自社の保存方法や対象書類によって異なります。国税庁の最新情報や税理士などの専門家へご確認ください。
自社でスキャンする方法と電子化サービスの違い
紙の請求書が少ない企業では、自社の複合機やスキャナーでPDF化する方法でも運用できる場合があります。
一方、件数が増えると、スキャンだけでなく、ファイル名の変更、請求情報の入力、申請、承認、会計ソフトへの登録などが負担になります。
違いを整理すると、次のとおりです。
自社スキャンと電子化サービスを比較
請求書電子化サービスが向いている企業
次のような企業では、自社でスキャンするだけでなく、電子化サービスを比較する価値があります。
紙の請求書が多い企業
毎月数十枚、数百枚の請求書を手作業でスキャンしている場合は、受領・スキャン・入力に多くの時間がかかります。
受領代行やデータ化に対応したサービスを使えば、自社で行う作業を減らせる可能性があります。
請求書の受領方法がバラバラな企業
紙、メール、Webサイト、担当者宛てなど、請求書の届き方が分散している場合は、一元管理できるサービスが向いています。
承認に時間がかかる企業
紙の回覧やメール承認を行っている企業では、ワークフロー対応サービスを利用することで、誰の承認で止まっているか確認しやすくなります。
経理担当者が少ない企業
一人経理や少人数の経理部門では、スキャンや入力に時間を使うと、資金管理や決算などの業務に手が回りにくくなります。
入力代行やBPOまで含めて検討するとよいでしょう。
原本の保管場所に困っている企業
紙原本を外部保管できるサービスや、一定期間後の返送・破棄に対応するサービスもあります。
ただし、原本の扱いはサービスや契約条件で異なるため、必ず確認してください。
紙の請求書を電子化する方法によくある質問

紙の請求書はスマホで撮影してもよいですか?
国税庁のQ&Aでは、スマートフォンやデジタルカメラなどによる読み取りもスキャナ保存の対象となり得ることが示されています。ただし、解像度や階調、保存方法などの要件を満たす必要があります。
スキャンしたら紙の請求書を捨ててもよいですか?
保存要件を満たしていることを確認したうえで判断する必要があります。
スキャン画像の確認が終わる前や、社内の運用方針が決まっていない段階で、すぐに廃棄するのは避けた方が安全です。国税庁のスキャナ保存Q&Aでも、読み取り後の紙書類の廃棄について説明されています。
PDFにすれば電子帳簿保存法に対応できますか?
PDF化するだけで対応が完了するとは限りません。
スキャナ保存では、読み取り品質、入力期間、真実性・可視性の確保などの要件が関係します。電子取引データについても、電子データのまま適切に保存する必要があります。
メールで届いたPDFを印刷して保管してもよいですか?
メール添付やWebダウンロードなど、電子データで授受した請求書は、電子取引データとして保存方法を確認する必要があります。国税庁は令和6年1月以降の電子取引データの保存方法を案内しています。
紙の請求書を電子化すると原本は不要になりますか?
必ず不要になるとは限りません。
保存要件を満たしているか、税務以外の目的で原本が必要か、契約書や社内規程で保管が求められていないかを確認する必要があります。
電子化サービスを使えば法対応はすべて任せられますか?
対応機能を備えたサービスはありますが、導入だけで自社の対応が自動的に完了するわけではありません。
対象書類、処理担当者、保存期間、訂正・削除、原本の扱いなど、自社側の運用ルールも必要です。
まとめ|紙の請求書は保存方法まで決めて電子化しよう
紙の請求書は、複合機やスキャナーを使って自社でPDF化する方法と、請求書電子化サービスや受領代行を利用する方法があります。
請求書が少ない企業なら、自社スキャンでも対応しやすいでしょう。
一方で、
- 紙請求書が多い
- 入力作業に時間がかかる
- 承認が遅い
- 複数の場所へ請求書が届く
- 原本保管に困っている
という企業では、電子化サービスを利用することで業務全体を効率化できる可能性があります。
ただし、紙をPDF化するだけで電子帳簿保存法への対応が完了するわけではありません。
紙で受け取った請求書を電子保存する場合はスキャナ保存の考え方を確認し、メールやWebで受け取った請求書は電子取引データとして保存方法を確認しましょう。
また、インボイス制度の仕入税額控除では、原則として帳簿と請求書等の保存が必要です。
自社スキャンで限界を感じたら、電子化サービスを比較しましょう
請求書電子化サービスは、紙の受領、スキャン、データ入力、承認、会計連携、原本管理など、対応できる範囲が異なります。まずは6サービスの違いを確認し、自社に必要な機能を整理しましょう。
各サービスの料金・受領方法・AI-OCR・会計連携・向いている企業をまとめて比較できます。


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